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（１／１５） |
| 西暦２２００年春。地球を飛び立って早くも半年が過ぎてしまったが、ヤマトはまだ大マゼラン雲にもたどり着いていない。 航海の遅れの原因はいうまでもなく、度重なるガミラスの妨害との戦いによるものだった。たかが戦艦１隻にも関わらず敵が執拗に攻撃してくるのは、あるいはヤマトの航海の目的を感付いているからかも知れない。先日、バラン星のガミラス基地で得た資料は、彼らが地球を移住先の惑星に選んでいたことを示していた。あの遊星爆弾による悪魔のような攻撃も、そのための環境改造だと考えれば、ヤマトがイスカンダルから放射能除去装置を持ち帰ることは、ガミラスにとって計画の失敗につながることになる。 しかし･･････こんな銀河系を遠く離れた場所に、地球侵攻に関する重要な基地があるということは、はたしてガミラスの本星もヤマトの進行方向に存在するのだろうか？ 長年に渡るガミラスの攻撃を受けながらも、地球人類は自分たちの敵の正体については何一つわからなかった。このヤマトの航海中にようやく敵を捕虜として捕らえ、生物学的なデータを得ることが出来たのだが、依然としてガミラスの全貌は謎に包まれている。 当初、地球側はガミラスを銀河系内の近隣恒星系にある国家だと考えていたのだが、ガミラスの規模はもっと大がかりなものらしいとわかってきたのも、このヤマトの航海によってようやくというところである。 「艦長、敵からの入電です！」 相原通信士の声に、艦長は思索を中断した。 「入電？ ガミラスからか？」 いったい何のつもりだろうか。かつて一度だけガミラス総統デスラーと名乗る人物からの入電を受けたことがある。太陽系を出たばかりのヤマトが宇宙機雷群の罠にはまってしまったのを、人の手で機雷を除去するという手段で脱出した時に、冗談ともつかない《祝電》を受け取ったのである。 その時は傲慢なガミラス側の余裕の現れとも受け取れ、ヤマトの乗組員は大いなる屈辱を味わったわけであるが、今回は敵にもそんな余裕があるとは思えない。 「相原、読め」 艦長の指示を受けると、相原は受信記録を読み上げた。 「ヤマトの艦長に次ぐ。 そろそろお互いに雌雄を決する時が来たようだ。諸君がイスカンダルへ行こうというのと同じように、我々も地球を欲している。もし、諸君がどうしてもイスカンダルへ行こうというのであれば、わが軍を正面から打ち破る必要がある。 ついては、本日より七日後、七色星団において、艦隊戦力による決戦を申し入れる。 太陽系方面作成司令官ドメル ヤマト艦長殿」 通信はその後に決戦場となる七色星団の座標データが添えられていた。 「挑戦状だな、これは」 艦長はそう言って第１艦橋にいるスタッフたちの顔を見渡した。 「罠かも知れませんな･･････受けるべきではないでしょう」 ベテランの徳川機関長がそう言った。真田技師長も同意するように肯く。 「わざわざ場所を指定してきたからには、地の利は向こうにあります。のこのこ決戦場に向かうのは、それこそ敵の思う壺です」 「ただでさえ、ヤマトの航海は予定より２ヶ月も遅れています。罠とわかってる決戦なんかに時間を割いている余裕はありません」 航海長の島も反対を表明した。 「古代、戦闘班長として君はどう思う？」 艦長は戦闘班長の古代に意見を求める。 「自分は決戦に応じるべきだと思います」 古代はきっぱりと言い切った。 「古代。おまえ、ヤマトの置かれている状況がわかっているのか？」 島が古代に言った。 「島。これは決戦なんだぞ、わかっているか。勝つか、負けるか。負ければそれまでだが、勝てばすべての道が開ける。いま、この決戦を避けても、これから先ずっとガミラスとの戦闘を覚悟しなければならない。航海の遅れを取り戻すなら、どっちが近道かおまえにもわかるだろう」 「古代班長のいうとおりだ。いまここで一気に叩いておいた方がいい」 血気にはやる口調で古代を支持したのは戦闘班長補佐の南部。 「しかし、敵の罠かも知れない場所に赴くよりも、個々に叩いて行く方が確実なんじゃないかな」 航海班長補佐の太田が反対意見を擁護するように言う。これで反対派は４人。古代たち決戦賛成派は２人と分が悪くなった。 「相原、君はどうだ？」 艦長に名指しされた相原は少し戸惑った。 「艦長。自分は･･････自分は、もう逃げるのは嫌です」 相原の脳裏にはリレー通信衛星事件のことが甦っていた。ガミラスがヤマト乗組員の士気を低下させるために配置したリレー衛星による地球との通信回復を、真っ先に知った相原は、通信班長としての職権を乱用し、年老いた地球の両親との交信をくり返すことで精神的にダメージを負ってしまった。その時の混乱を来した行動は相原にとってはずっと重荷になっていた。 「例え決戦を避けたとしても、ガミラスは何度でも襲ってくる。どうせ戦わなければならないなら、早めに叩いておいた方が良いと思います」 相原がそう言うと、艦長は大きく肯いた。 「森くんはどうかね？」 最後に残った紅一点のレーダーオペレーター、森雪に意見を求める。 「私は戦いは出来る限り避けるべきだと思います。でも、どうしても避けることが出来ないのなら、相原くんのいうように早めに済ませておくべきだと思います」 雪は明快に答えた。これで賛成、反対とも４人ずつで同数となった。 「諸君の意見は聴かせてもらった。賛成、反対とも、それぞれもっともな意見だ。しかし、私は古代と同意見だ。ヤマトの航海に後が無いのは今に始まったことではない。常に崖っぷちで戦って来たのだ。いまさら何を恐れることがある」 艦長はそう言ってもう一度、一同の顔を見た。 「この挑戦を受けよう。必ずいつかは通らなければならない、我々の試練なのだ。必ず勝ってイスカンダルまでたどりつこうではないか」 艦長はそう言って笑みを見せた。 「相原、ガミラスのドメル司令に対して返電だ。この挑戦、確かに受けると伝えろ。地球防衛軍・宇宙戦艦ヤマト艦長、土方竜の名でな」 |