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（１０／１５） |
| 「ドリルミサイルが命中しました。これで我々の勝利は確定したも同然ですな」 ゲールの顔に喜色が浮かんだ。 「うむ。ハイデルンは身を賭して任務を全うしてくれた。これで我が艦隊は勝利へ一歩近付いた。しかし、ヤマトの艦長は優秀な戦術家だと聞く。油断は禁物だ」 ドメルは部下達の気を引き締めさせた。 「ヤマトへのとどめは、いかがいたしましょう？」 「手はず通り、戦艦による艦砲射撃でヤマトを沈める。戦艦部隊をヤマトに向けろ。我々はここで高みの見物だ」 ドメルは艦隊の後方に待機していた４隻の防空戦艦に指令を出した。 このガミラス艦隊きっての最新鋭艦である新型防空戦艦は、従来のガミラス艦とは一線を画したデザインによって作られていて、後のガルマン・ガミラス軍で採用された大型戦闘艦を一回り小さくしたような外観をしていた。ただし、当然のことではあるが、この艦ではまだブーメランカッターミサイルなどは装備されていない。主砲である三連装ビーム砲４基と、アイランドを取り囲むように針ネズミの針のように装備された対空機関砲が特徴である。 本来、この防空戦艦は、地球移住船団の護衛用に開発された戦艦であり、その試作的に建造された４隻がガミラス本星防衛艦隊に配置されていた。地球移住計画を推進する傍ら、大小マゼラン雲に戦線をしているガミラスにとって、ヤマト以外にもガミラス本星を脅かす可能性のある敵は多かった。 その大切な艦がここにあるということは、ドメルはけっして負けることが許されないということをしめしている。だからこそ、勝利の確信がもてたこの時期までこの戦艦部隊を温存していたのだ。作戦が最初から失敗していたなら、ドメルは戦艦部隊だけを逃れさせた上で、残った艦とともにヤマトと刺し違えようと覚悟を決めていたのであった。 一方、瞬間物質移送装置の破壊直後にヤマト攻撃に向かった雷撃部隊は、まもなくヤマトに達しようとしていた。しかしながら、この編隊を迎撃に向かったはずの山本編隊は、この空間に立ちこめた高濃度の星間物質のためにこれを発見することができず、そのままドメル艦隊に向かって飛行を続けていた。 やがてヤマトに到達したガミラス雷撃部隊は、ドリルミサイルの為に身動きできないヤマトに襲いかかった。ヤマトを直援しているブラックタイガー第１編隊は直前まで繰り広げられていた戦闘機部隊との死闘によって、大半の機が傷ついていて思うように迎撃できない。 しかしながら、ヤマトの分厚い装甲はガミラス機の雷撃によく耐えた。本来なら数回撃沈されてもおかしくない量の宇宙魚雷を浴びながら、ついに致命傷を受けること無くこれに耐えきったのである。 後に地球防衛軍戦史室はガミラス型の航空魚雷について、こうまとめている。 「ガミラス型の航空魚雷は、魚雷の速力及び命中率を重視した設計になっており、そのぶん炸薬量が少な目になっていた。従来型の地球艦ではこの量でも十分致命傷と成り得たが、格段に分厚い装甲を備えていたヤマトを沈めるだけの威力は持てなかった」 そして、ガミラス側はこの時までに手持ちの航空戦力のほとんどを消耗していたのである。また、ヤマト側もすでに燃料・弾薬の尽きた第１編隊を全機帰投させざるを得なかった。 「ヤマトはわが雷撃部隊の攻撃にも耐えたようですな」 ゲールは少し不安そうに呟いた。 「案ずるな。ヤマトにはもう幾程も戦力は残っていまい。すべては戦艦部隊が止めを刺してくれる。勝利は目前だぞ、ゲール」 ドメルはほくそえんだ。 「第２空母のバーガーが、再出撃準備完了を報告してきましたが？」 「急降下爆撃部隊か・・・どうせもう使うこともあるまいが、念のためだ。発進準備を整えた上で待機させて置け」 しかし、この処置が致命的なミスになろうとは、この時のドメルは思っても見なかった。ほとんど作戦が順調に進み、あと一歩で勝利ということから、慢心して油断していたからといって、誰も責めることはできまい。 ガミラス軍きっての砲術屋であるキールミュレット艦長が指揮を取る戦艦部隊は、ヤマトから発進してきたブラックタイガー第２編隊とすれ違った。 「敵の艦載機部隊ですが、いかがしましょう？」 「我々の目的はヤマト撃沈だ。向こうから攻撃してこなければ、構うでない」 キールミュレットは悠々泰然としてそう言った。 「しかし、進行方向には機動部隊がいますが？」 「本隊でも敵機の出撃はキャッチしているはずだ。案ずる必要は無かろう。まあ念のため報告を送って置け」 しかしながら、どういうわけか、ブラックタイガー第２編隊の動向はドメルの本隊では掴んでいなかった。それどころか、キールミュレットが発信したはずの報告の通信も、なぜか本隊では受信されなかったのである。長い戦闘時間の内に暗黒星雲内の星間物質の濃度が変化したために、ガミラス軍の通信システムが不調を来たしていたのではというのが戦後の有力な説ではあったが、それを釈然としない向きも多い。 ともあれ、一方のブラックタイガー第２編隊の方は、当然ガミラス側に自らの行動を察知されているものとして、びくびくしながら戦艦部隊の脇をすれ違っていったのである。 「今の戦艦部隊は攻撃しないのですか？」 「あの分厚い装甲と、強力そうな対空砲撃力。下手に攻撃しても戦果は挙げられないぞ。それより敵の本隊である機動部隊を叩いた方が効果的だ」 山本はそういって直進の指示を出した。 |