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（１２／１５） |
| 「波動砲発射準備完了」 ドリルミサイルを排除しようとする真田の発案にしたがって波動砲の発射準備を進めていた古代が報告した。 「敵艦隊の動向は？」 「散開しつつ接近してきている様子です」 レーダーの使えない中、数々の情報を判断して敵艦隊の推定位置から割り出した結論を太田が答えた。 「これじゃ、敵はヤマトを袋叩きになぶり殺しにするつもりだぞ」 南部が叫んだ。もはやヤマトに使用可能な火器はほとんど残っていない。そのことを知るだけに、南部は絶望的な心境を抑えることができなかった。 「狼狽えるな。南部、使用可能な砲門はどれだけある？」 土方は落ち着いた声でそう言った。 「第１主砲１門、第１副砲２門、第２副砲２門、第３主砲２門です」 「艦尾の方が戦力的には残ってるということか・・・よし、針路反転１８０度。砲撃で敵艦隊を牽制しつつ、恒星間通路に撤退する」 土方はメインパネルに映し出された七色星団の各恒星間を縫うように伸びている重力バランスのとれた通路を指して言った。 「通路の幅は場所によってはヤマトがぎりぎり通れるだけの広さしかない部分があります。レーダーが使えない状態でそのような場所に飛び込むのは無茶です」 島が異論を述べる。しかし、土方の答は一言だった。 「島、これは命令だ」 戦艦部隊の接近の前に反転していくヤマトを見て、キールミュレットは追撃を命じた。 「勝利は目前だ。ヤマトを逃してはならん！」 全速でヤマトを追う戦艦部隊。しかし、ヤマトの逃げ込もうとする恒星間通路を前にして、キールミュレットは考え込んだ。 「この通路ではわが部隊が散開したままでの追撃は不可能だ。ヤマトはそれが狙いか？ しかし、追撃をやめるわけにはいかんな。どのみちヤマトには戦力は幾らも残ってはおらんのだ」 キールミュレットは戦艦部隊を縦列隊形に組み替えて追撃を続行した。これを待っていたかのように、ヤマトからの砲撃が襲いかかる。 「ヤマトめ、わが部隊を個別撃破するつもりか・・・ひるむな！ 逃げながらのへっぴり弾など、そうそうに当たるものではないわ」 事実、ヤマトの放ったショックカノン砲の命中率は高くはなかった。しかし、それは七色星団の恒星重力による時空の歪に原因するものであったのだが・・・ ともかく、これが土方の仕掛けた巧妙な罠だとは、キールミュレットは気付かなかった。 「艦長、まもなく恒星間通路が終わります」 航路計算を続けている太田が報告した。 「敵艦隊の距離は？」 「推定、ヤマト後方５０００宇宙キロ。全速で追撃してきています」 「ドリルミサイルは？」 「小型爆弾のセットは完了しています。ただし、ミサイルが機関室に迫っています。排除可能な時間はあと僅かです」 第１艦橋に戻ってきていた真田が答える。 「よし、針路反転１８０度。反転と同時に敵艦隊に向けて波動砲を発射し、ドリルミサイルの排除とともに敵艦隊の撃破を行う。古代、準備はいいな？」 「波動砲の発射準備は完了しています。反転と同時にカウントダウンを開始し、敵艦隊に向けて発射します」 古代は答えた。 「島、針路反転だ」 「針路反転１８０度、よーそろー」 ヤマトは急速に回頭を始め、敵艦隊を正面に捉えた。 「ヤマト、反転しました！」 「血迷ったかヤマト？ ドリルミサイルで波動砲が使えないはずなのに、いったいどういうつもりだ」 キールミュレットはヤマトの行動を図りかねた。 「まさか、我々と斬り違えるつもりではな・・・ 全艦集中砲撃だ。必ずヤマトを撃沈させるのだ！」 しかし、正面同士で撃ち合い、しかも味方が縦列隊形というのでは、効果的な砲撃は困難でしかない。戦況はキールミュレットの思惑通りには進まなかった。 「波動砲発射１０秒前」 「９・・・８・・・７・・・６・・・５・・・４・・・３・・・２・・・１・・・」 「爆弾点火！」 「発射！！」 真田の手によって小型爆弾が一斉に点火されると、波動砲発射口の内装に接触していたドリルミサイルの外装が瞬時に剥がれ、ドリルそのものも破壊された。ドリルの破壊によってミサイルの起爆装置が作動したが、それよりも一瞬早く発射された波動砲のエネルギーによって摩擦の無くなったミサイル本体はヤマトの外部に吹き飛ばされ、その爆発も波動砲のエネルギーの流れに飲み込まれてしまった。そして、そのエネルギーの流れはそのまま直進し、ヤマトに向かっていた戦艦部隊を一瞬にして消し去ったのである。 しかしながらこの波動砲発射はヤマト自身も傷つけてしまった。ドリルミサイルの強制排除によって破損した内装に波動砲のエネルギーが逆流し、波動砲発射口の周辺区域は大きな被害を被ったのである。これによってヤマトは再び波動砲の使用が不可能になったのだ。 「艦長、申し訳ありません。私の計算ミスによって波動砲を・・・」 真田は土方に詫びた。 「いや、気にするな。敵の戦艦部隊を全滅できたのだ。まだ戦闘は終わったわけではない。反省はその後からで十分だ」 土方はそういうと、島に針路を指示した。 「ブラックタイガー第２編隊の収容を行う必要がある。至急、元の空間から敵艦隊機動部隊の所在地にかけて移動する」 |