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（１３／１５） |
| 突然のドメルの死後、戦闘空母に機関を移して艦隊の指揮を執り始めたゲールは、機動部隊で生き残ってるこの戦闘空母と第１空母の２隻を率いて、そろそろヤマトに止めを指しているはずの戦艦部隊と合流しようと移動を始めた。 機動部隊を襲撃し、第２・第３空母と円盤旗艦を沈めたヤマトの艦載機部隊は、弾薬が尽きたのか、攻撃はそれっきりで去って行った。防空態勢の空白を突かれて機動部隊の半数を失ったのだが、それはただヤマト側の最後の足掻きと思えるだけだった。 だから、機動部隊が残り２隻になろうと、ゲールは勝利の確信になんら変更を加えようとはしなかった。もちろん、この時すでに戦艦部隊がヤマトの波動砲によって全滅していようとは、予想だにしていなかった。 「ドメル司令と空母２隻を失ったが、これで我々もバラン星での汚名をすすぎ、祖国の英雄となれるのだ」 ゲールは悠々と艦を進めた。しかしながら、戦艦部隊との予定合流地点に到っても、その姿を発見することは出来なかった。 「レーダーに味方艦の反応はありません」 「戦艦部隊からの通信応答ありません」 オペレーターの報告する内容はにわかに信じられないものであった。 「あれだけの戦艦部隊が消滅するはずがない。捜せ！ 何としても捜し出せ！！」 ゲールはレーダー要員たちに檄を飛ばした。しかし、次にもたらされた報告はまったく予想だにしなかったものであった。 「ヤマト発見！ 前方距離１万」 「なに、ヤマトだと？」 ゲールは驚愕した。ヤマトが健在であるということ、それは戦艦部隊の敗北を意味していた。 （ドリルミサイルの時限信管はとっくに起爆しているはずだ。ヤマトが目の前にいると言うことは、どうにかしてドリルミサイルを排除し、波動砲で戦艦部隊を葬ったということに違いない） ゲールは考え込んだ。 （すでに何度もの攻撃によって、ヤマトの通常戦力はほとんど使いものにならないはずだ。しかし、波動砲が健在となると話は別だ。空母２隻の我が艦隊など、一撃で消滅してしまうだろう） （勝ち目が無ければ逃げ帰るのも選択の一つだ。ドメル司令亡き今、我々が逃げ帰ったところで軍法会議に掛けられることは無いだろう。しかし、勝利を目前にしてこの場を去るのは心残りだ） ゲールの頭の中には、多大なる戦功を立てた者に贈られるデスラー勲章のことが頭をよぎった。 （これだけのチャンスはそうないぞ。よく考えろ。ヤマトに波動砲を使わせなければいいだけの話だ。敵はレーダーも使えないのだ。この戦闘空母の装備があれば何も心配することはない） こうしてゲールの心は決まった。 「全艦小ワープ準備。ヤマトの側面から使用可能なミサイル・砲弾を全力で叩き込み、ヤマト後方に回り込んでＵターンして反復攻撃を仕掛ける。いかに分厚いヤマトの装甲でも、この攻撃には耐えられまい」 ゲールは勝利を確信した。 キールミュレットの戦艦部隊を撃滅したヤマトは、元いた空間にとって返し、機動部隊攻撃から戻ってきたブラックタイガー第２編隊を回収した。そしてその直後に戦闘空母と第１空母からなる残存部隊を確認したのである。 ヤマトの現状判断について、ゲールは大きな誤りを二つ犯していた。波動砲はなおも使用不能状態にあったということが一つ。そしてもう一つは、ここに戻ってくる間に真田の率いるチームがレーダーの応急修理を済ませてしまったということである。 ヤマトは残存部隊の行動を明確にキャッチしていたのだ。 「敵艦隊、ワープしました」 「ヤマトの姿を見て、驚いて逃げだしたのか？」 古代はそう言ったが、土方によって否定された。 「いや、敵はヤマトの至近距離からヒットアンドラン攻撃してくるつもりだろう。全砲門砲撃準備！ 左右両舷舷側ミサイル、煙突ミサイル、対空パルスレーザー砲発射用意」 土方の言葉に古代も慌てて復唱し、指示を出した。次の瞬間、ガミラス艦隊はヤマトの至近距離に姿を現したのである。 「右舷前方、敵艦隊出現。距離５００！」 太田がそう叫ぶのと同時に、ヤマトは敵艦隊の猛攻を受けた。ここまで戦力を温存していた戦闘空母はもちろんのこと、ろくな対艦兵装も持たない第１空母までも繰り出しての攻撃であった。両艦はヤマトとすれ違いざまにありったけの攻撃を行った。 もちろんヤマトも使用可能な兵器で応戦を試みたが、主砲・副砲がほとんど使えない状態では戦力に違いがありすぎた。そのため、生き残っていた兵装さえも次々に沈黙して行ったのである。 「このままじゃなぶり殺しだ」 南部が叫んだ。 「敵は反復攻撃してくるぞ。島、針路反転１８０度だ」 古代は反転して迎撃の準備を整えようとする。 「待て。ヤマトはこのままの態勢で敵艦隊の反転する瞬間を第３主砲で狙え！」 土方は古代の言葉を差し止めると、そう指示した。 「了解。第３主砲で敵艦隊の反転の瞬間を狙います」 案の定、波動砲を恐れるゲールは、ヤマトからそう離れない場所で反転に取りかかった。ヤマトの第３主砲はその瞬間を狙って連続射撃を行った。 亜光速の巡航速度で至近距離をすれ違う敵を狙うのは、その相対速度を考えると非常に困難であるのだが、ある程度の距離を置いて反転する敵を狙うのはそれと比べると静止した的を狙うようなものである。第３主砲から放たれたショックカノン砲は次々に敵艦隊に叩き込まれていく。 反転の隙をつかれたゲールは慌てた。波動砲を恐れる余り、主砲の射程距離を失念していたというのが本当のところだが、数発の命中弾によって戦闘空母の回転甲板上に備えられた兵装が次々に破壊された。そのまま致命的な打撃を受けるかに思われたが、それを救ったのは第１空母だった。 第１空母は戦闘空母の前面に割り込み、ヤマトからの砲撃を防ぐ盾となった。しかしながらその薄い装甲は長くは持たず、わずか命中弾の２、３発で撃沈してしまったのだが、この犠牲によって戦闘空母は生き残った。 「ついにこの戦闘空母だけになってしまったか。だが、勝負はまだこれからだ。ガミラスの栄光はこの手で勝ちとってやるぞ！」 ゲールはヤマトに向かって最後の突撃を仕掛けた。双方共にありったけの兵装をつぎ込んだ壮絶な殴りあいが繰り広げられたが、その次は無かった。 |