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第２章 「地球独立戦争」 |
（１／５） |
| ケンタウルス座アルファ星第４惑星にあるボラー艦隊辺境補給基地を奇襲作戦で占拠した航空戦艦アスカは、自由地球連合独立政府の樹立を宣言し、ボラー連邦に対して地球独立戦争の宣戦を布告した。 地球連邦政府の降伏時に脱走もしくは消息を断ち、銀河の各地に散らばり宇宙海賊となっていた地球連邦艦隊の残党の多くがこれに呼応し、暫定首都の置かれたアルファ星第４惑星に集結。その戦力は、戦艦４、空母６（うち軽空母４）、巡洋艦１２（うちパトロール艦５）、駆逐艦２４（うち捕獲ボラー艦３）という一大勢力となった。かつての地球連邦艦隊の威容とは程遠いものがあるが、地球進駐軍を初めとする辺境のボラー軍にとってはうかつに手を出すことの出来ない存在が誕生したのである。 もっとも、この独立政府軍にしてもすぐさま地球周辺のボラー軍を駆逐するだけの戦力は無く、しばらくはにらみ合いを中心とした小競り合いが続くこととなる。 アルファ星解放から１か月。修復されたアルファ星補給基地は新たに自由地球連合独立政府軍の本部基地と生まれ変わり、暫定政権の結成式典が開かれることになった。 これに先立ち、独立政府軍首脳はその象徴として、航空戦艦アスカに搭乗していたイギリス・ウィンチェスター朝の王女であるパトリシアを臨時代表に担ぎ上げることを決定していた。 「相変わらず、食事は一人なのね」 アスカの士官食堂で夕食のタンドリーチキン定食を食べている恭子に、からかうように春香が声を掛けてきた。 「当たり前でしょ。パトリシアはお偉いさんたちとの晩餐会なんだから」 「食事中はお姫様の警護しなくて良いの？」 春香はエビフライ定食の養殖ブラックタイガーにぱくつきながら訊ねる。 「あたしがいなくったって、たくさんの警護官がいますからね。だいたい、食事中も警護なんかしてたら、あたしの食事時間が無いでしょ」 「そうか、晩餐会の豪華料理付とかいう役得は無いのか･･････」 「当たり前でしょ！」 恭子は自分の料理に手を出そうとしている春香を睨めつけながら言った。 「でも、居室は豪華スイートの来賓室なんでしょ」 「あれは、あたしの部屋じゃなくて、パトリシアの部屋なの！」 「名目はともかく、同居してることに変わりは無いんだから一緒じゃない」 春香はそう言いながら味噌汁をすすった。 「でも、王女殿下はもうすぐこの艦を降りるんでしょ？ そしたら恭子も地上勤務になるのね･･････」 「冗談じゃないわよ。前から艦長に転属願い出してるのに、そんなことされちゃ、即刻、辞表を提出してやるわ」 恭子は怒ったように言った。 「あらあら、辞表なんて、穏やかじゃないわね」 二人の会話を聞いていたのか、そう言いながら吉野少佐がやってきた。 「王女殿下からは引き続き、身辺警護官としてあなたを付けてくれるようにとの要望が出てるみたいだけど･･････」 「パトリシアのやつ･･････そんな要望、力ずくでもすぐに撤回させてやる･･････」 恭子はそう言って、指の関節を鳴らした。 「ちょっと、ちょっと。あんたが王女殿下に暴力ふるってどうするのよっ！」 春香が半分あきれたように言う。 「うちの航空隊も欠員の補充を要求してるんだけど、よそのパイロットに当たるしか無いようね」 吉野少佐がさりげなくそう呟くと、恭子はその手を取ってすがりついた。 「少佐ぁ〜〜」 うるうる眼で見つめる恭子に、吉野少佐は宥めるように言った。 「はいはい。艦長には私からも要望は出しとくけど、あまり期待しないでね」 （アルファ星基地防衛航空隊の創設も検討されてるから、そちらに取られちゃう可能性も大きいんだけど･･････） 吉野少佐はそのことは口に出さなかった。 |