======================================================================== |
第２章 「地球独立戦争」 |
（２／５） |
| 「アルファ星を占拠した反乱軍が独立を宣言か･･････連中もやりよるのぉ」 一升瓶を片手にした老年の医師が、ＴＶを見ながら感心したように言った。 「先生、言動には気を付けてくださいよ。反乱の傾向があるって判断されたら、私が先生をしょっ引かなければいけませんからね」 傍らにいる若いボラー兵士が困ったような表情で言った。 「心配はせんでええよ。わしは、同じ地球人としての連中の心意気に感心しただけじゃ。何も、連中の仲間に加わろうと言っとるわけじゃない」 医師はそう言いながら、コップに酒を注ぎ込んだ。 「連中の心意気に乾杯じゃ」 「だから、そういう行動が反抗的に受け取られるんですって」 兵士は不安そうに周囲をキョロキョロしながら言う。 「おまえさんが気にすることは無いじゃろ。どうじゃ、おまえさんも一杯やらんか？」 「私は勤務中ですから飲めません。それに、反乱軍の決起への乾杯に加わったとなったら、即刻、軍法会議ものですよ･･････」 「おまえさんも、硬いのぉ。ヤマトの幹部連中はともかく、わしの監視なんぞ、そんなに気合入れてせんでも良いじゃろうに」 医師は他人事のように呟いた。 「先生も幹部扱いされているんですよ。少しは監視対象者としての自覚を持ってください」 兵士のその言葉には応えず、医師は近くにいた飼い猫を呼び寄せた。 「ほれ、ミーくん。おまえは飲むじゃろう。ほら、乾杯じゃ」 「佐渡先生･･････」 ボラー兵は途方にくれてしまった。 地球の首都メガロポリスの郊外にある佐渡犬猫病院（人間も診療可）に、しばらくして来客があった。 「佐渡先生、お元気ですか？」 それは、やはりボラー兵の監視を連れた一人の若い女性だった。 「わしはこの通り、元気じゃよ。それより、おまえさんもマメじゃの。こんな老いぼれの見舞いにやってくるより、恋人といたほうが良いじゃろうに･･････」 「あの人も同じ境遇ですから、そう頻繁に会うわけには･･････それに、ヤマトの皆さんがこのような状況におかれているのも、元はと言えば祖父の責任ですから、こうして定期的に見舞わせていただいているのが、せめてもの･･････」 彼女の声は次第に涙声になって、最後は言葉にならなかった。その様子を見た佐渡先生は話題を変えた。 「そうじゃ、相原のヤツはどうしとる？ あれはあれで順応性の高い男じゃから、こういう状況でもそれなりに元気にやっておるんじゃろう？」 「ええ、相原さんは･･････」 彼女、藤堂晶子は相原の話題を振られると、急に明るさを取り戻したかのようにしゃべり始めた。そして、相原の近況を話し終わると、大田、南部、真田、島、山崎、加藤という旧ヤマト乗組員の幹部たちの近況に移った。 そして最後に表情を変えて言った。 「雪さんには、また会えませんでした･･････」 「そうか･･････」 佐渡先生は悲しそうに頷く。 「あれ以来、誰とも会おうとはしとらんみたいじゃの。あんなことがあったんじゃ、雪の気持ちもわからんでもないが、このままの状態が続くと健康が心配じゃからのぉ･･････わしが行って慰めてやれれば良いのじゃが、そういうわけにもいかんからな」 佐渡先生はそう言いながら、ここ２か月間に起こった事件を思い出していた。 |