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第３章 「出会い」 |
（３／５） |
| 広大な着艦デッキを持つアスカへの着艦は、アリゾナで鍛えた恭子には難なく済ませられる動作だった。管制の指示通りに着艦作業を行い、エアロックされた格納デッキに降り立った恭子たちを迎えたのは一人の連絡員だった。 「ウィンチェスター修技生はブラッドリー艦長がお待ちです。艦長室まで付いてきて下さい」 「相変わらず艦長のお気に入りね、パトリシアは。で、わたしはどうするの？」 「土方少尉はパイロットルームで待機していて下さいとの指示です」 恭子はパトリシアを見送ると、格納デッキからそう遠くない位置に設けられているパイロットルームに入った。さすがに航空戦艦であるアスカのパイロットルームは、数人分のスペースしかないアリゾナのものとは桁違いに広かった。おまけに内部はブリーフィングルームとレストルームに分かれ、レストルームの中は居心地が良さそうだった。 「あ、日本茶だ」 恭子はレストルームに備え付けのドリンクの中に日本茶を見つけて、なんだかうれしくなった。北米の戦艦で、しかもパイロットが３人しかいないアリゾナのパイロットルームにはコーヒーとレモンティーぐらいしか用意されていないのだが、よく考えればアスカは日本の戦艦である。当然、パイロットも日本人が多いのだろう。 日本茶の香りにしばらく恭子が浸っていると、ちょうどミーティングが終ったのか、奥のブリーフィングルームからパイロットたちがぞろぞろと出てきた。 「見慣れないパイロットスーツね」 恭子が声の方を向くと、そこには黒いパイロットスーツに身を包んだ３人の女性パイロットが立っていた。 地球防衛軍のパイロットスーツの標準色は淡いスカイブルーであるが、地球連邦艦隊旗艦として作られたアリゾナ航空隊の色は鮮やかなインディアンブルーとなっていた。それが変わっているというのなら変わっているけど、黒いパイロットスーツだって同じだろうにと恭子は思った。 「北米船団・護衛戦艦アリゾナ航空隊、土方少尉です」 恭子がそう名乗ると、相手は右手を差し出した。 「航空戦艦アスカ第２航空隊・トライスター小隊の愛河中尉よ。そして私の小隊の織手河少尉と松秋少尉。ジェットストリーム・アタッカーズ“黒い三連星”の名前は覚えておいてもらうわ」 恭子はようやくパイロットスーツのカラーが、ここでは小隊毎に違っているということに気付いた。 「ふぅん。あなたが今年の極東校卒業生のナンバー１パイロットというわけね」 少し挑発的な口調に恭子が振り向くと、そこには派手なショッキングピンクのパイロットスーツがあった。 「どういう基準であなたが連邦艦隊旗艦のパイロットに選ばれたのかは知らないけど、他の訓練校にはあなたより上のパイロットがいたってことをわからせてあげましょうか」 彼女は自信満々の表情だった。 「別にわからせてほしくは無いけど、あたしだって好きで戦艦の艦載機パイロットなんかやってるわけじゃないし･･････なんなら代わってあげましょうか？」 恭子は自分の希望配属先の第１志望がこの航空戦艦アスカだったことを思い出していた。 「そんなつもりは無いわ。でも、各地の訓練校の卒業生の中で成績ナンバー１のパイロットが旗艦のパイロットに選ばれるって伝統で、それを今年はあなたが選ばれたってことが納得できないのよ」 いつのまにか恭子の正面にやってきた彼女は、不機嫌そうに食って掛かる剣幕だった。 「鳥見少尉は自分が実力ナンバー１パイロットだったって思ってるのよ」 そばのパイロットの一人が言った。 「自分の父親が殉職した連邦艦隊司令長官だったら間違いなくアリゾナに配属されていたって･･････」 その言葉を聞いた途端、恭子は怒りが込み上げてきた。 「あなたはあたしが実力も無いのに、パパのおかげでアリゾナのパイロットに配属されたって言うの！」 「そうじゃないなら、それを証明してもらいましょうか」 「望むところよ」 売り言葉に買い言葉で、恭子はこのショッキングピンクのパイロットと格闘戦で勝負を付けることになってしまった。 |