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第４章 「激闘」 |
（３／５） |
| デーズィが艦橋に着いた時、まだ当直士官以外のメンバーは揃っていなかった。 「何があったの？」 航空管制オペレーター席に付くと、隣にいる当直の通信オペレーターに尋ねた。 「マイアミが被弾しました。船団の前方より未確認艦隊が接近中です」 アリゾナの勤務は三交代制ではあるが、平時には兼任で間に合う部署に付いては、必ずしも当直が終日置かれているわけではない。航空管制オペレーターの任務も、空母ではないアリゾナにあっては閑職に近く、デーズィの当直以外の時間は他の専門の当直オペレーターが兼任している。その代わり、デーズィも自分の当直時間には兼任で通信オペレーターの任務も行っている。自分の専門だけに専念できるのは戦闘配備の時だけだ。 「未確認とは何か！ ただちに艦籍を確認せよ」 幕僚たちと晩餐会を開いていたはずのブラッドリー艦長が現れた。 「艦籍判明しました。ボラー連邦です」 「またか･･････」 情報分析担当のオペレーターが報告すると、戦闘指揮担当のモハマッド・シン副長が悔しがるような表情を見せた。 「駆逐艦ダイナスト、被弾」 「敵艦隊接近、距離１万５０００宇宙キロ。主砲の有効射程距離内に入りました」 アリゾナの前方には船団の各艦が展開し、探査中の惑星が存在するために拡散波動砲は使えない。 「全砲門開け！ 目標、接近中のボラー艦隊。照準固定と同時に連続射撃だ」 シン副長が指示すると砲術オペレーターが火器管制コンピューターへと指令を入力する。やがて、アリゾナの主砲はボラー艦隊に向かって砲撃を始めた。 「マイアミとダイナストの被害状況は？」 「マイアミは機関部が大破。自力航行、不能です。ダイナストは艦首部分を中破。戦闘に支障あるも、航行は可能です」 船団状況モニター担当オペレーターの報告に、ブラッドリー艦長は決意した。 「本艦を船団の前に出す。護衛空母アーカンソーは艦載機部隊発進の後、駆逐艦ダイナストと共に後方へ退避。探査艦マイアミは全乗組員を駆逐艦ディープシーとグレータービーストに移乗の上、廃棄する」 「マイアミを廃棄するのですか？」 先任参謀が聴き返した。 「航行不可能な以上、廃棄するしかあるまい」 「しかし、調査艦を失えば、惑星探査の続行は不可能です」 敵弾の一発がアリゾナを掠めたのか、艦体が揺れた。 「それはわかってはいるが、輸送艦も工作艦も失った我が船団では、マイアミを修理するのは不可能だ。かと言って、ワープ空間まで曳航していくこともできまい。まだ人類滅亡が明日に迫ったというわけでも無いのだ。一度、地球に戻って態勢を立て直すという選択肢も考慮に入れて、後で考えよう」 ブラッドリー艦長はそう言って、各艦に指示を飛ばした。 「ボラー艦隊より艦載機多数発進確認」 「アーカンソーからの発進はまだか？」 「アーカンソーより返信。コスモタイガー発進準備完了。間もなく発進します」 その報告に、大きく頷くブラッドリー艦長。 「第１、第２副砲に三式波動対空弾用意！ 敵の艦載機は我が方の数倍はある。コスモタイガーとの交戦以前に半減させておくのだ」 三式波動対空弾とは波動カートリッジ弾の一種である。カートリッジそのものに波動エネルギーが詰められているのではなく、波動エネルギーを詰めた小型の散弾が無数に詰め込まれ、攻撃目標に到達するとＡＩセンサーによる信管装置が作動して散弾が撒き散らされるという究極の対空兵器である。その名の示すように２２０３年になって制式採用された最新兵器だ。 「三式波動対空弾、装填完了しました」 「よし、撃て！」 アリゾナの２つの副砲塔から発射された６発の実体弾は、アティク第２惑星の重力を受けて僅かに放物線を描きながら、接近してくるボラー艦載機群の真っ只中に飛び込んだ。 たちまちにして半数が殲滅され、浮き足立つ敵編隊。そこへアーカンソーから発進してきたコスモタイガーの編隊が襲い掛かった。数ではまだボラー側が優勢だったが、三式波動対空弾の前に隊列を崩した敵編隊を、コスモタイガーはみるみる叩き落していった。 それでも数に勝るボラー艦載機の何機かはコスモタイガーの攻撃を潜り抜け、船団に向かって直進してくる。 「艦長、本艦もコスモファルコンを出撃させましょう」 「うむ」 シン副長の提案に艦長は肯いた。 「コスモファルコン、全機発進準備！」 |