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第２章 「地球独立戦争」 |
（３／５） |
| 太陽の核融合異常増進による人類絶滅の危機に、第２の地球を求めて航海を続けていたヤマトだが、探査計画最後の星であるスカラゲック海峡星団ベータ星で護衛戦艦アリゾナの残骸を発見したのと引き換えに、人類移住先の惑星はついに発見できなかった。 途方にくれる乗組員たちに救いの手を差し伸べたのは、惑星ファンタムで保護したシャルバート星のルダ王女だった。王女の手引きでシャルバート星からハイドロコスモジェン砲を受け取ったヤマトは、さっそく太陽制御に取りかかるべく、太陽系に帰還した。 しかし、そのヤマトの前に立ちはだかったのは、ベムラーゼ首相自らが率いるボラー連邦の大艦隊だった。究極兵器ブラックホール砲の前に、太陽目前で足止めされるヤマトだったが、デスラー総統率いるガルマン帝国の艦隊がこれを救った。 デスラー総統とベムラーゼ首相の大将同士の最終決戦を始めたガルマン、ボラーの両艦隊を尻目に、ヤマトはボラーの妨害を撥ね退けてハイドロコスモジェン砲による太陽制御を敢行。これによって惑星破壊ミサイルの突入による太陽の核融合異常増進は収まり、地球は本来の気候を取り戻した。 ところが、ヤマトが太陽制御を終えた時、すでに決戦は終わっていた。多数のデスラー砲による一斉攻撃によってボラー艦隊の大半を葬ったデスラーだったが、ベムラーゼ首相の旗艦機動要塞には傷一つ付けられず、逆にブラックホール砲の攻撃の前に全滅状態に至った。起死回生を狙ったハイパーデスラー砲も機動要塞の空間磁力メッキに跳ね返され、ここに勝敗は決した。 命からがらマイクロブラックホールから脱出したデスラーは、そのまま宇宙の彼方に消え去り、ガルマン帝国本星には二度と戻らなかった。決戦に破れたガルマン帝国ではキーリングが実権を握り、旧ガミラス勢力を追い出し、即刻、ボラー連邦に和平交渉を打診したという。 勝ったベムラーゼ首相はヤマトと地球に対し、即座に無条件降伏を要求した。徹底交戦を模索するヤマト艦長の古代も、地球に惑星破壊ミサイルを突き付けられては降伏するしかない。その日から地球はボラー連邦の占領下に置かれた。 ボラー連邦進駐軍による地球の占領統治は、かつての暗黒星団帝国軍による占領と比べると、意外と緩やかなものであった。もともと他民族からなる星間国家であるボラー連邦は、ベムラーゼ首相に対する忠誠を求める建前とはよそに、彼らにとって要所と思える星系以外での支配下民族に対する統制は比較的緩やかなものであった上、度重なるガルマン帝国との交戦によってその軍事力が著しく損なわれていたことも見逃せない。ベムラーゼ首相の旗艦機動要塞がいくら無敵でも、単独で広大な領域を暴力的に支配することは不可能なのだ。ボラーにとって、一介の辺境国家に過ぎない地球は、敵対的な軍事力を持たない存在であれば十分なのである。 しかしながら、建前としては戦争の決着はきちんとつけておく必要がある。 地球を占領したボラー進駐軍は地球防衛軍の解体こそ命じなかったものの、その保有戦力を著しく制限する政策を取った。波動砲搭載艦の新たな建造は禁止され、残存する大型戦艦、制式空母はすべて接収されることになった。とりわけ、ボラーに対する敵対の象徴と見られたヤマトは即座に接収、隔離され、旧乗組員の幹部クラスは全員戦犯の汚名を着せられ、ボラー兵の監視下に置かれた。 もっとも、旧地球防衛軍の大型艦がすべてボラーに接収されたわけではない。航空戦艦アスカを初めとする、当時まだ惑星探査航海の途上にあった探査船団の多くはボラー軍への投降を拒否して姿をくらませた。また、土星基地にあった主力艦隊の一部や、太陽系外周艦隊の一部も反旗を翻して逃亡。その戦力を合計すると残存する巡洋艦クラス以下の地球艦隊に匹敵するものと見られた。 こうして地球の艦隊戦力を再編成したボラー進駐軍の最高司令官ミシェロフスキー少将が次に手をつけたのは、戦争犯罪人に対する軍事裁判であった。 ボラー連邦の地球占領統治を正当化するためのデモンストレーションと見られたこの軍事裁判だが、最終的に裁かれた戦犯の数は多くは無いものの、その裁判内容は想像以上に厳しいもので、しかもボラー連邦の独裁制を象徴するかのような１か月という異例のスピード裁判によって、長く地球人類の記憶に残ることになった。 法廷の開かれた月面フォンブラウン市の名前を取って後にフォンブラウン裁判と呼ばれるこの軍事裁判だが、読者にとって関心があると思われることだけを簡単に記すことにしよう。 |