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YAMATO Another History Series 3 『地球独立戦争・ヤマト奪取作戦』
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第3章 「航空戦艦アスカ」

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 翌朝、8時からの定例ミーティング。ブリーフィングルームに集合した第2航空隊のパイロットたちの中に、恭子と春香の姿もあった。
「二人とも、何なの? その顔は」
 吉野少佐は呆れ顔で二人の顔を見た。恭子は目の周りにクマを作り、いかにも寝不足ですという表情。一方の春香は右目の周りに大きなアザを作ってる。
「何でもありません」
 声をそろえて返事する二人だったが、互いにそっぽを向いてる感じだった。
「ま、いいわ。二人とも格納室までついてらっしゃい」
 吉野少佐はそう言うと、二人を連れてブリーフィングルームを出た。

「女の子の顔をグーで殴らないでよ! おかげで、こんな大きなアザが出来ちゃったじゃないの」
 歩きながら春香は小声で恭子に言った。
「いくら相手が女の子でも、自分の身の危険を感じたら本気で殴るのは当然でしょ」
 恭子も平然と言い返す。
「なんで身の危険を感じるのよ? ちゃんと優しくしてたじゃない」
「夜中に着てるもの脱がされて、裸の同性に抱き付かれたりなんかしたら、誰だっ
て危険を感じるわよ!」
 恭子は顔を真っ赤にしながら、春香を詰った。
「ふぅん。異性なら良いんだ」
「良いわけないでしょ!」
 恭子は思わず大声を出しそうになって口を押さえた。こんな会話、他人に聞かれたりしたら、いったいどんな噂が立つかわかったものではない。
「あたしにはそんな趣味無いって言ってるのよ」
 恭子はそう言って春香をにらみつけた。
「春香にそんな趣味があったなんて知らなかったわよ。おかげで怖くて一睡も出来なかったじゃない」
「バカね。あのまま気持ち良くなったらぐっすり寝られたわよ」
 恭子の言葉をどこまで聞いてるのか、あっけらかんと呟いてる春香。
「言っておくけど、二度とあんな真似したら、絶対に許さないからね!」
 恭子はきつく言い張った。
「そんなのもったいないよぉ。キョーコのスレンダーなボディってあたしの好みなのに・・・・・・」
「ええいっ! そんな目であたしを見るのはやめんかいっ! 寒気がするわ」
 もの惜しげそうな眼で自分の全身を嘗め回すように見ている春香に、恭子は怒鳴りつけた。
「赤ちゃんが出来たりするわけじゃないんだし、別に何か減るわけじゃないんだから良いじゃない」
「女同士で赤ちゃんなんか出来てたまるかいっ!」
 恭子は思わず大声でツッコんでいた。おお慌てで口を塞いで周囲を伺う。幸い、先を歩く吉野少佐以外に近くに人影は無い。ほっと胸をなでおろしながら恭子は続けた。
「減るものはあるわよ。モラルとか、品位とか、理性とか・・・・・・あなたには縁の無いものかも知れないけどね」
「そんなの、愛があって適当に節度を保ってれば大丈夫よっ! キョーコだって一線を超えれば抵抗感なんて無くなるのに・・・・・・」
(その一線を超えないっていうのが世間一般で言うところの節度なんじゃ・・・・・・)
 恭子は大声でツッコみたくなる気持ちを、今度はこらえた。
「どうでもいいけど、あんた、さっきからあたしの名前、カタカナで伸ばして呼ぶのはやめてよ」
「じゃ、キョンキョンなら良いの?>キョンキョン」
「普通に漢字で呼んでって言ってるのよ、もぉ!」
 恭子はそう言ったとき、すでに目的地にたどり付いたことに気付いた。目の前には呆れ顔の吉野少佐がこちらを向いて立っていた。
「あなたたち、プライベートなことは干渉しないけど、聞いてる人間が恥ずかしくなるようなことは、あまり勤務時間内に話さないでくれる?」
 少佐の言葉を聞いて、恭子は顔が真っ赤になって、どこか穴に入りたくなってしまった。
(ま、まさか、全部聞かれてたの?)
 あんたが悪いんじゃない、と春香の方をにらみつける恭子だったが、春香は何でも無いように平然としていた。
「パートナーとの信頼関係を深めるための話だもん、プライベートも何も関係無いでしょ、少佐」
「はいはい。ま、逆に信頼関係が崩壊しちゃわないように、ほどほどにしておきなさいよ」
 少佐は適当に春香をあしらって、その話題を終えた。
「土方少尉。あなたには鳥見少尉と同じ小隊でコンビを組んでもらうことになるけど、問題は無いわね?」
「ええ、まあ・・・・・・」
 恭子はそう返事しながら、せめて居住区だけは変えて欲しいって要求するべきかどうか迷った。
「そうそう、言っておかなければいけないことだけど、運用上の都合もあるから、あなたにもコスモイーグルに乗ってもらうわよ」
 吉野少佐はそう言うと、格納庫のわきにいた整備班のスタッフに声を掛ける。
「朝倉主任、土方少尉の機体の準備は出来てる?」
「はいな、ばっちりOKや。いつでも飛ばせられるで」
 そう言いながら近付いてきたのは、恭子たちと歳の違わない、そばかす顔で眼鏡を掛けたお下げ髪の女性だった。
「土方少尉は初めてね。紹介しておくわ。先日からここの整備班で、第2航空隊担当メンテナンスチームのチーフをやってもらっている朝倉真由美技術少尉よ」
「うちが朝倉いいます。よろしゅうに頼んますわ」
 朝倉真由美はそう言って右手を出してきた。恭子は慌てて握手する。
「あ、あたしは元アリゾナ航空隊パイロットの土方です。こちらこそよろしく」
「へぇ。そうか、あんたがあのコスモファルコンのパイロットやったんか。機体を見せてもらったけど、パイロットに大事にされとるみたいで、幸せそうな感じやったで」
「戦闘機の気持ちってわかるんですか?」
 なんか友人のことを喋ってるかのような真由美に、恭子は思わず訊ねた。
「当たり前や。機体の気持ちもわからんで整備士なんかやっとられへんよ。戦闘機も人間が心をこめて作り上げ、整備し、操縦するもんや。大事にされてる機体は、それに応えた戦果を上げてくれる。戦闘機がスペック以上の性能を発揮できるかどうかも、機体と整備士、パイロットの気持ちの触合いしだいや」
 真由美は陶酔したような表情で語り続けた。
「うちがここの整備主任やってる限りは、整備に関しては心配せんでええで。後はあんたらパイロットがいかに愛情注いでやるかの問題やなぁ」
 一人で肯きながらそう語った真由美は、恭子に向かって言った。
「今度のイーグルも大事にしたってな。ファルコンの方はうちが愛情込めて保管しとくさかい、心配せんでええよ」
「その、土方少尉のイーグルはどこにあるのかしら?」
 真由美の話が終わるのを待って、吉野少佐は訊ねた。
「ちょうどマーキングのペイントが乾いたとこや。これから出してくるから、搭乗レーンで待っといてや」

 恭子たちがパイロット搭乗口で待っていると、数分で整備工場から機体が運ばれてきた。
「ファルコンと同じ、インディアンブルーをメインカラーに、ペイントパターンは鳥見少尉の機体とお揃いにしといたわ」
 真由美の説明を聞きながら機体を眺める恭子。確かに春香の機体とは色違いというだけで、パターンは同じだった。
「あれは?」
 恭子は2枚の垂直尾翼に描かれた模様を指差して言った。背中に羽の生えた子供がラッパを持って逆立ちをしてるような絵が、青地に白い塗料で描かれていた。
「ああ、あれは小隊長はんからの注文や。エンジェルの絵にしてくれっていう話やから、20世紀のお菓子メーカーの意匠を参考に描いたんよ。鳥見少尉の機体にも同じのを描いといたで」
「小隊長?」
 恭子と春香は疑問に思って吉野少佐の顔を見た。
「あなたたちのチームリーダーよ。転属元の残務整理に手間取ってるみたいだけど、明日には着任してくるわ」
 そう言われて、1小隊3機編成がアスカ航空隊の基本編成だということを思い出した。
「でも、なんでエンジェルなのよ?」
 不満そうに春香が言った。
「そういう疑問は、小隊長が来てからにしなさい」
 吉野少佐はそう言って春香をあしらうと、恭子に向かって言った。
「通常、機種変更の場合は2週間の研修期間が設けられるけど、あなたにはそんなに必要無いでしょ? ここ2、3日は本艦の作戦予定は無いから、適当に飛ばして勘をつかんでおいてね」

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